住宅業界の今後-2024年以降に待ち受ける課題とは。
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住宅業界の今後-2024年以降に待ち受ける課題とは。
少子高齢化や新型コロナウイルスによる影響など、住宅業界を取り巻く環境は、厳しい状況におかれています。以前より改善されている部分もあるとはいえ、これらの社会情勢が住宅業界に及ぼす影響は、非常に大きいといえるでしょう。
これから住宅業界で働きたいと考えている方は、業界の現状や抱えている課題、これから業界全体がどのようにこれらの問題に対応していくか、知っておく必要があります。
そこで本記事では、住宅業界の現状からこれから先の未来について、わかりやすく解説します。住宅業界で働きたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
住宅業界の現状
住宅業界は、人材不足や資材不足をはじめ、コロナウイルスの影響など多くの問題に直面しています。そのため、住宅業界の現状は、非常に厳しい状況に直面しているといわざるを得ません。
2024年以降、各ハウスメーカーや工務店は独自の生き残り戦略を考え、実行していくことがより重要になるでしょう。
人材不足
さまざまな業界で働き手不足が問題になっている昨今、住宅業界も例外ではありません。住宅業界で人材が不足している原因には、いくつかの理由が考えられますが、おもに以下の理由が挙げられます。
● 若手の離職
● ベテラン労働者の引退
● コロナウイルスや少子高齢化の影響
ここでは、それぞれの理由についてわかりやすく解説します。
若手の離職
人材不足といわれている住宅業界のなかでも、若い労働者の離職は重大な問題です。厚生労働省のデータによれば、令和3年時点の建設業の離職率は9.3%とされています。
9.3%という数字は、年間に10人に1人が退職しているということになり、人数で考えるとそれなりに高い数字のように感じられるでしょう。しかし他産業と比較して見たとき、もっとも離職率が高い宿泊業のデータが25.6%であることを鑑みれば、低い離職率であるとわかります。
ただ、この離職率の低さは、そもそも業界に参入する若手自体が減少しているとも考えられるのです。総務省の調査では、建設業界への就業者数は年々減っており、平成15年には600万人を超えていた就業者数は、令和4年には500万人を下回ったとの結果が出ました。
こうした入職者の減少理由は、少子化の影響も大いにありますが、職場環境の悪さもまた影響を与えていると考えられています。
職場環境の悪さの具体例として、建設業界では3K(汚い、危険、きつい)などといわれることが多く、とくに近年では、全産業と比較しても長い労働時間が問題視されていることが挙げられます。
2024年からは残業時間の上限が設けられるなど、環境改善の兆しも見られますが、依然として業界にネガティブなイメージを持つ若者が少なくないというのが現状でしょう。
ベテラン労働者の引退
ベテラン労働者の引退は、人材不足に拍車をかける大きな問題のひとつです。平成26年時点では、建設業界で働いている55歳以上の人の割合は、およそ34%といわれていました。現在の社会は高齢化が進んでいるため、この数値は年々上昇傾向にあると考えられています。
一方で、29歳以下の割合は平成10年以降、下がり続けているといわれています。新しい若い人材の業界への参入が少ないことに加え、スキルやノウハウを持ったベテラン労働者が高齢化によって引退してしまい、技術の継承ができないことや、それによる業界全体の質の低下などが懸念されています。
少子高齢化
少子高齢化により、労働人口そのものが減少傾向にあることが問題視されています。これは建設業に限った問題ではなく、社会全体としての問題でもあります。とくに重大なのが、労働人口は今後増加する可能性がないともいわれていることです。
その根拠として、政府の統計では2070年には総人口が9,000万人を下回り、その一方で高齢化率は38.7%と、今よりも右肩上がりになっていくと試算しています。
政府としても、少子化対策や労働環境の改善をはじめ、女性の社会進出の支援や外国人労働者の雇用推進など、複数の対策により労働人口の減少を抑えるべく活動しています。
これらの対策に加え、IT技術の導入による生産性向上や、少ない労働人口で高い成果を出す手段の検討が求められています。
資材不足
アメリカや中国における木材需要が増加した影響で、材料となる木材が高騰しています。その理由として、アメリカにおいてはロックダウンの緩和と低金利政策によって、住宅建設の需要が刺激され、住宅の着工数が増加したためとみられています。
また、中国では、経済成長が旺盛なことで丸太や製材の需要が急速に増加していると考えられ、林野庁によれば、製材の消費量は2010年〜2019年までの10年間で2.5倍に増加したというデータもあります。
このように、アメリカと中国における木材の需要が増加したため、国際市場における木材の供給が不足し、木材価格の上昇につながっています。日本は建築用木材の約7割を輸入に頼っているため、木材価格の高騰は、住宅業界にとって大きなダメージを与えているといえます。
コロナショック
コロナウイルスの影響で、住宅業界では資材や部品の調達に遅れが生じました。たとえば、住設・建材メーカーでは、水回りの部品や製品の供給に遅れが生じたり、協力会社からの部品の供給が遅れたりといったトラブルに見舞われました。
これは、生産地である中国全土で新型コロナウイルス感染症の拡大が長期化し、流通が途絶えたことが原因であると考えられます。
水回り製品だけでなく、住宅に使用するあらゆる資材や設備が一時調達しにくくなるなど、コロナウイルスは住宅業界に大きな影響を及ぼしたといえるでしょう。
新規住宅着工戸数の減少
新しく住宅を建てる数は、コロナ前までは毎年80万戸以上の着工戸数がありました。しかし、コロナの影響で部品や資材の調達が遅れた影響もあり、コロナ禍においては60万戸台まで新規住宅着工戸数は減少したといわれています。
株式会社野村総合研究所の発表では、2022年で86万戸、2030年には74万戸、2040年には55万戸と、この数値は2040年まで減少し続けるとされています。
事業の海外展開
国土交通省住宅局では、日本が戦後の住宅不足や多くの災害を乗り越えるなかで、蓄積してきたノウハウを活かし、国際協力や海外展開を推進しています。
具体的には、日本の住宅・建築分野の事業者の海外展開促進のための環境整備や、新興国等への事業展開に関する取り組みを支援するなど、新興国の住宅建築水準の向上や、日本の企業の新たなビジネスチャンスの創出を目指しています。
住宅業界における今後の課題・動向
住宅業界における今後の課題や動向として、少子高齢化による住宅着工戸数の減少や働き手不足、ベテラン労働者の引退にどのように向き合うかが重要であるとわかりました。
さらに、限られた労働人口のなかで成果を上げるための仕組み作りなどが、今後の焦点とみられています。
新規住宅着工戸数の減少
野村総合研究所の発表によれば、新しく住宅を建てる数を指す新規住宅着工戸数は、今後も長い年月をかけて減少し続けると試算されています。日本社会全体として、人口そのものが減少する傾向にあるため、家を建てる数が減るのは自然な流れでしょう。
統計では、コロナの影響で住環境を見直しする人が増加傾向にあります。そのため、少子高齢化対策に加え、こうした住環境の見直しに興味を持った人や、省エネなど環境に配慮した住宅に興味を持つ人の需要を取り込んでいくことが大切になるでしょう。
リフォーム市場の拡大
新規住宅着工戸数が減少の一途をたどる一方、リフォーム市場については、わずかながら拡大したといわれています。これは、コロナの影響でリモートワークや家にいる時間が増加したことで、住環境を見直そうと考える人が増え、リフォームを行う人が増加したためとみられています。
野村総合研究所の発表では、新規住宅着工戸数は減る一方で、今後もリフォーム市場については成長していくと見込んでいます。したがって、今後はリフォーム市場に参加する企業の増加が予想されるため、企業は他社との差別化を図り、強い競争力を培っていく必要があるでしょう。
時間外労働の上限制限
3Kといわれる労働環境へのネガティブイメージや、全産業平均と比較して年間300時間以上の長時間労働などが問題視されていますが、建設業では2024年4月1日から時間外労働に上限制限が設けられます。
納期の都合や他業者とのスケジュール調整の兼ね合い、天候不順よる遅延など、仕事柄長時間労働になりがちな建設業界でしたが、これからは特別な事情がない限り、年間360時間の残業時間を超えて残業させることはできないことになりました。
現在では、週休二日制の導入などの働き方の改革をはじめ、労働環境の見直しが進んでいます。これからも引き続き、限られた人材と限られた作業時間で効率よく働けるよう、業務の効率化が求められていくでしょう。
材料価格の高騰
アメリカと中国での木材需要増加による木材価格の高騰は、今後も続いていくとみられています。とくに、木材価格の高騰による資材不足は、住宅業界にも影響を及ぼし続けるでしょう。
ウッドショックとも呼ばれるこの現象は、着工戸数にも影響があるとみられており、木材の価格が高騰すれば、着工戸数も減少していくと考えられています。
建設DX
少子高齢化によって、住宅業界に就職する若者が減り、ベテランが引退していくことで労働人口は減っていくとみられています。それに加え、木材価格の上昇や残業時間の上限が設定されるなど、住宅業界を取り巻く環境は依然として厳しい状況です。
こういった状況のもとで、住宅業界では、限られた人材でいかに効率よく働くかといった業務の効率化が求められています。そのカギとなるのが、DXの推進です。
DXとは、デジタルトランスフォーメーションを指す言葉で、IT技術などを活用して生産性や効率性を向上させる取り組みのことです。
AIやクラウドの活用による情報の一元管理、ドローンの導入などによる高所作業の効率化など、最新の技術やツールを活用することで、建設業界の未来を切り開くことが期待されています。
省エネ基準適合の義務化
2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、建築物の省エネ性能の規定が厳格化される動きが進んでいます。とくに、2025年に施行予定の「省エネ基準適合義務化」は、新築住宅や非住宅の設備や手続きに、大きな変更をもたらすことが予想されます。
就活生が持つべき視点
住宅業界は、人々の生活に密接に関わる分野であり、その動向や変化は社会全体に大きな影響を及ぼします。
法改正や国の施策など、住宅業界では多くの変化が予想されることから、これからのハウスメーカーの動向や取り組みにはとくに注目すべきといえるでしょう。ここでは、就活生が持つべき視点を3つのポイントに分けて紹介します。
今後の住宅のあり方
少子高齢化、IT技術の発展、新型コロナウイルスの影響など、多くの要因により、人々が住宅に求めるものが変化しています。
とくに、スマートハウスやスマートホームの発展が注目されており、これらの技術を取り入れた住宅の需要が増加していくことが予想されます。就活生はこれらの変化を踏まえたうえで、住宅の未来のあり方や役割について考える必要があるでしょう。
人々が求めるニーズの把握
住宅の購入は人生のなかでも大きな決断であり、顧客の真のニーズを理解することが重要です。今後、新築住宅の需要は落ち込むと推計されているため、リフォームやリノベーション市場の拡大など、新たなビジネスモデルの創出が求められています。
就活生は、これらのニーズを把握し、それに応じた提案やサービスを考える能力を身につける必要があるでしょう。
各企業の将来性の見極め
ハウスメーカーの今後の方針や戦略は、企業ごとに異なります。就活生は、各企業の強みや今後の戦略をリサーチし、自分の考えや価値観と合致する企業を見極めることが重要です。
企業がどのような技術やサービスを取り入れているのかを知り、その企業のビジョンやミッションに共感できるか、十分に考慮しましょう。
就活における定番の質問としてガクチカ、すなわち「学生時代に力を入れたこと」が挙げられるでしょう。
こちらの記事では、就活生が悩みがちなガクチカの書き方とコツ、自己PRとの違いを詳しく解説しています。
まとめ
本記事では、住宅業界を取り巻く現状と今後の課題、統計からわかる業界の動向などについて解説しました。少子高齢化による働き手不足など、業界が抱える課題は根深いといえます。
だからこそ、これから業界で働く若い人材には、DXの導入などによる業務の効率化や、限られた顧客のニーズを満たすサービスや付加価値の創出などに、期待が寄せられているというのも事実です。
業界の厳しい現状にネガティブになるのではなく、人々の生活に必要不可欠である住宅業界の課題を打破すべく、高い志を持って働くことが求められているのかもしれません。
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